2013年9月8日日曜日

2013年のアート・バーゼル・マイアミ・ビーチ



12月はマイアミがもっとも華やぐ時期かもしれません。恒例のアート展示即売会「アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ (Art Basel Miami Beach)」が開催され、あちこちでパーティがあり、モデルとおぼしき女の子たちが通りを闊歩しています。Art Basel Miami Beachの2013年の開催日は12月4日〜12月8日(初日は招待者のみ)。さきごろ、今年の出展者リストが発表されました。

※このエントリーの写真は2011年と2012年に撮影したものです。2013年の様子は「【写真】2013年のアート・バーゼル・マイアミ・ビーチ(前編)」でご覧ください。

Art Basel Miami Beach とは・・・

Art Basel Miami Beachは、スイスのバーゼルで開催されてきた、モダン/コンテンポラリー作品が中心の「Art Basel」が主催するアートフェア。2002年以降マイアミ・ビーチ市でも開かれるようになりました。2013年5月から、香港でも開催。(余談ですが地名が二つ付く名称って何か変な感じですね。「ラフォーレ原宿 新潟」みたい。)Miami Herald紙によれば、昨年2012年の入場者数は5日間で5万人だったそうです。売上は調べたものの分かりませんでしたが、美術館級の高額作品が取引されます。

ギャラリスト小山登美夫氏の著書「現代アートビジネス」(角川グループパブリッシング、2008年)には、
"(スイスのArt Baselは)コレクターの注目度も桁違いです。ギャラリストにとっては実力を試される正念場、すなわち「勝負フェア」です"  "ブースを出すまでの難易度が一番高い"(pp161-162)  "(Art Basel Miami Beachは) 世界的な現代アートのコレクターたちの家が、この地に集中しています。というよりも、マイアミに白羽の矢が立った最大の理由は、「コレクター密集地帯」だったからかもしれません" (pp168) 
とあります。 
小山登美夫ギャラリー(2012年)
本年は31ヶ国から258の画廊が出展。日本からは、昨年につづいて小山登美夫ギャラリーと、SCAI the Bathhouse。アジアからの出展が少なく、ちょっと寂しいですね。香港で開催するようになったので、この傾向にますます拍車がかかるのでしょうか?マイアミと近い関係にあるラテンアメリカからは31画廊(以上、下記ART collerctor's Asiaのサイトより)。ちなみに前掲書「現代アートビジネス」によれば、小山氏はお若いころSCAI the Bathhouseの仕事をされていたそうです。

アート・バーゼルマイアミ2013出店リストが発表
(ART collerctors' Asia、2013年9月6日)
SCAI the Bathhouse。名和晃平の鹿を展示(2012年)
コロンビアを代表する画家ボテロの絵。画廊名を忘れてしまいましたが、南米から出展していたのかも
(2012年)

2013年の開催時期に、話題になりそうなこと

今年のフェア開催時期に話題になりそうな、マイアミのアート/建築分野のトピックがふたつあります。

ひとつは今夏、Art Basel Miami Beachの会場である「マイアミ・ビーチ・コンベンション・センター」の再開発が決まったこと。設計はオランダのレム・コールハースです。再開発はマイアミ・ビーチ市がおこなうので、フェア主催側と直接関係はありませんが、もしかしたら関連イベントがあるかも?

<参考>コンベンション・センター改築に関するエントリー:
マイアミ・ビーチ・コンベンション・センター
もうひとつは新しい美術館のオープン。マイアミ美術館(Miami Art Museum)が「ペレス・アート・ミュージアム・マイアミ(Perez Art Museum Miami)」と名を変え、12月にダウンタウンに新館をオープンします。設計はスイスのヘルツォーク&ド・ムーロン。Art Basel Miami Beach開催時期に合わせた、盛大なオープニング・パーティがひらかれるものと考えられます。

オープニング展はアイ・ウェイウェイ(艾未未)展。タイトルは「Ai Weiwei: According to What?」、だいぶ前に六本木の森美術館でやった展覧会と同じ。この展覧会は現在、北米を巡回中のようです。アジアと関係が薄いマイアミでなぜ中国のアイ・ウェイウェイ?作品を貸してくれるコレクターがいるとか?と少々ふしぎなチョイスですが、アジアの作家の作品を見られるのは嬉しいことです。

<参考>Perez Art Museum Miami に関するエントリー:
一昨年2011年のArt Basel Miami Beachで展示されたアイ・ウェイウェイ作品

2011年、2012年の会場の様子2013年の会場構成

Art Basel Miami Beachの入場料は1日券が42ドル。高いですねえ…。しかし有力画廊、有名作家の作品がひしめく会場は、大盛況。観光気分で買わずに見るだけの人も大勢きています(私もそうです)。ブースや作品を撮影しても、なぜか怒られません。というわけで写真を撮りまくっているお客さんもいます(私もそうです)。
休憩コーナー。会場はこのように混雑しています(2012年)
会場では、美術館で目にするようなアートが流通している場を見ることができます。画廊には固定客がいるでしょうし、オークションもあるのになぜわざわざこの場で取引するのか、不思議です。オープンで華やかな場で売り買いすることによって、美術市場を盛り上げるのに一役買っているのでしょうか。値段はたいてい掲示されていません。冷やかしでアニッシュ・カプーア作品の値段をギャラリストに尋ねた人が、4億円だったか、すごい金額を言われていたのを目撃しました。
アニッシュ・カプーア作品(2011年)
Art Basel Miami Beachはテーマに沿っていくつかの部門に分かれており、公式サイトによれば、2013年は以下の8セクターだそうです。(一昨年、昨年もほぼ同じ構成だったと思います。Editionセクター...はあったかなあ?ちょっと思い出せません。)

Galleries:メインのセクター。世界各国の有力画廊のブース。

Nova:1人〜3人の作家の3年以内の作品を展示

Positions:1人の作家による作品をひとつ展示

Edition:プリント作品などを展示

Kabinett:Galleriesセクターから選ばれた画廊による別展示。画廊ブースよりコンセプトがはっきりした展示のようです。

Public:バス美術館(Bass Museum of Art)と共同作業の屋外展示。←これは無料で誰でも見ることができます

Film:コンベンション・センター内と、屋外のサウンドスケープ・パーク(Soundscape Park)で映像作品を上映。←屋外は無料のはず

Magazine:各国の美術雑誌を展示
Galleriesセクター。パリのギャラリー・ペロタンのブース(2012年)
Novaセクターのブース(2011年)
Positionsセクターの展示(2011年)
Publicセクターの屋外展示。Bass Museum近くのビーチ。写真は設営中の様子 (2012年)

Filmセクターの映像視聴ブース(2012年)
Filmセクターの屋外上映。Soundscape Park にて(2011年)
このほか講演会や、屋外パフォーマンスなどのイベントが組まれることと思います。

なお会場にはリッチな装いのマダムなど華やかな方たちがいらっしゃいますが、会場が広いため各ブースをじっくり見たい方は、実をとって歩きやすい靴で行かれるのがおすすめです。
リッチなマダム、ではなく、パフォーマンス・アーティストのお二人(2012年)

次回のエントリーで、Art Basel Miami Beachと同時期に開催されるサテライト・ショーについてご紹介します。

Art Basel Miami Beach公式サイト

スター建築家物件、続々- H&dM、N.フォスター、ザハ (2013年4月28日)


参考文献:
「アスキー新書061 現代アートビジネス」
(小山登美夫 著、株式会社グループパブリッシンッグ 発売、2008年)

リーマン・ショック以前の著作なので、現在では状況が変わっているかもしれませんが、現代アートの市場やギャラリーの仕事について、とても分かりやすく書かれています。小山氏の「日本のアートを海外に売りたい」「日本のマーケットを成長させたい」「良い作品を社会に残したい」という熱い思いが伝わって来ます。ご本人についての逸話、たとえば修業時代に出会った村上隆氏、奈良美智氏(彼らも当時は無名)とのエピソードなども面白いです。村上・奈良両氏の作品はこういう理由で海外で先に売れたんだ、作品の真意はここにある、と作品の見方や評価についても「なるほど」と勉強になります。

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