2013年9月22日日曜日

アート・バーゼルのサテライト・ショー


本丸Art Basel Miami Beach開催と同時に、主催者が異なる「サテライト・ショー (satellite show)」とよばれるアートフェアが大量に出現します。入場料は15ドル〜25ドルくらい。

展示会ビジネスとでも言うのでしょうか、マイアミだけでなくニューヨークや欧州で同様の展示会をおこなう主催者が多いようです。ちなみにこうしたアートの展示会のことは、日本で使う「アートフェア」より「アート・ショー(art show)」という呼び方が定着しています。

開催場所はマイアミ・ビーチ、ミッドタウン、ウィンウッドなどで、会場は仮設テントがほとんど。ミッドタウンと、隣接するウィンウッドのあいだに集中しています。事前に見たいショーの目星を付けておくと動きやすいので、Miami New Times(マイアミのフリーペーパー)などに掲載される各ショーの傾向、目玉展示をチェックしておくと良いと思います。

下記「Art-Collecting.com」のリストはシンプルにまとまっていて見やすいと思います。ご参考に(英文)。現時点で2013年のマイアミ出展が決まっていないショーもありますが、分かる範囲でそれぞれの特徴をご紹介します。基本的には、すべてのショーはコンテンポラリーアートを扱っています。開催日時、入場料、各ショーの公式サイト等については、Art-Collecting.comをご参照ください。(写真は2011年、2012年のもの)

Miami Beach Art Fairs and Miami Art Fairs - 2013 (Art-Collecting.com)

Design Miami
デザインに関する展示会。これのみ主催がArt Baselで、Art Baselとの共通券も販売されます。Art Basel展示場の駐車場に、その年に指名されたデザイナーによるパビリオンが建設されます。2011年のみ見たことがありますが、デザイナーズ家具の展示がメイン。アウディのブースを、建築家ビャルケ・インゲルスがデザインしていました。
Design Miami (2011年)
Design Miami、Audiブース(2011年)
Design Miami パビリオン(2012年、設営中の様子)
デザイン・ディストリクト地区にも別会場があり、2012年は原研哉、伊東豊雄、隈研吾、坂茂、藤本壮介ら日本の錚々たるデザイナー/建築家の作品が「Architecture for Dogs(犬のための建築展)」で展示されました(未見)。

Brazil Art Fair <NEW!>
2013年初出展。ブラジルの画廊が40軒あつまるそうです。マイアミを訪れる外国人ではブラジル人が非常に多いといわれており、Miami Herald紙によりますと、2012年に海外旅行したブラジル人180万人のうち、なんと75%(!)がフロリダを訪問したそうです。またブラジルからマイアミへの不動産投資も活発なようです。こうした状況を反映しての出展かと思われます。

Florida is overwhelming choice of Brazilian visitors (Miami Herald, 2013年4月5日)


Art Miami / Context <オススメ>
2012年に見ました。Art Miamiと姉妹フェアのContextが合体して一カ所で開催。Contextは2012年に新設。Art Miami は長らく開催され続けているよう。一方Contextはキャリア中盤の作家を紹介するというテーマのようです。Art Baselに負けないくらい大規模でした。Art Baselでは美術館級のアートが出品されますが、こちらはややカジュアル、ポップな雰囲気。入場者は多く、活気がありました。中庭ではグラフィティアートの公開制作も。
Art Miami/Context。奈良美智作品に見入るお客さん.
Pace Printsブースだったと思います(2012年)
Art Miami/Contextグラフィティアート公開制作(2012年)
2012年の目玉展示はイギリスの覆面グラフィティ・アーティスト、バンクシー(Banksy)の壁画でした。ニューヨークの画商による展示でしたが、バンクシーは公共の場にゲリラ的に描いた絵を、自らの作品だと名乗り出ることはありません。そこで、画商が私利のために入手した壁画を好きなようにしていいのか、とアーティスト達から反発があり、それもあってか販売はされず、展示のみにとどまりました。
Art Miami/Context。警備が厳重だったバンクシー作品(2012年)
2013年はなにが話題になるでしょうか?Contextでは昨年に続き、ベルリンのアートシーンを紹介するとのことです。

Untitled. <オススメ>
こちらも2012年初開催。ニューヨークのキュレーターが企画したものです。会場にはなんとなく洗練されたニューヨークの気配が(気のせい?)。ショー全体の雰囲気に一貫性をもたせるべく、審査・キュレーションしているように窺えました。このショーは唯一ビーチにテントを設置、展示数はあまり多くなく、ゆったりした会場構成。海辺のカフェテリアがとても素敵。
Untitled. (2012年)
Untitled. 左手がカフェテリア。外にも席がありました(2012年)
Untitled. バーコーナー(2012年)

Miami Project
こちらも2012年初開催。広すぎず、落ち着いた雰囲気でした。
Miami Project (2012年)
Miami Project (2012年)

Scope
2011年に見ました。規模はけっこう大きい。ミッドタウンが会場でしたが、Untitledに対抗してか、2013年はビーチに会場を移し、海辺のラウンジなど作るそうです。出展審査はあるそうですが、Untitledほどがっちりキュレーションしている感じではなさそうです。
Scope (2011年)

Red Dot Miami
2011年、2012年に見ました。自由度が高いといいますか、美術からインテリア、美術名鑑的なものまで、さまざまな物が出展されていました。
Red Dot Miami 入口のインスタレーション(2011年)
Red Dot Miami (2012年)

Fountain Fair Miami (2013年の開催は未定)
2012年に見ました。ストリートアートの雰囲気が濃厚。倉庫のような会場で、玉石混交ですが文化祭的な面白さも(空調がないなど、出展者からの不満も聞きました)。こちらで「Mr Somebody & Mr Nobody」というユニットのファブリックを購入したのですが、フェア後Miami Art MuseumやWolfsonian Museumのギフトショップで扱われるようになりました。Fountainの名はマルセル・デュシャンの「泉」から。
Fountain (2012年)
Fountain。Mr Somebody Mr Nobodyのブース(2012年)

NADA Art Fair Miami Beach
未見。ミッド・ビーチ(マイアミ・ビーチ中部)のDeauville Beach Resort ホテルの展示場で開催。2013年は日本からMisako & Rosen、無人島プロダクションが出展するようです。

Pulse Miami
未見。映像やパフォーマンスアートなどがあるのが特徴?イベント会場のIce Palace Film Studiosで開催。

Seven
未見。7軒の画廊が共同開催しているようです。

Spectrum / ArtSpot
未見。新進およびキャリア中盤の作家が中心のようです。同時開催のArtSpotは、ラテンアメリカと中国の作品を紹介するとのこと。

Miami River Art Fair
未見。2012年初開催、おそらく唯一ダウンタウンで開催されるショーです。

Justmad MIA
未見。2012年初開催だったかも?マドリードの企業がオーガナイズしているそうで、スペインの画廊の出展が多い。

Fridge Art Fair
未見。詳細不明ですが、リトル・ハバナ地区で開催されるようです。

Pool(2013年の開催は未定)
未見。まだ所属ギャラリーがない新進作家の紹介がメインのようです。

Overture(2013年の開催は未定)
未見。2012年は、ギャラリーの出展に加え、アンディ・ウォーホル作品を特集展示、Arts for a Better Worldという社会貢献イベントを開催したようです。

ブティックホテルで開催されるショー
下記はマイアミ・ビーチの小さなホテルを会場に開催されるショーです。客室を展示に使うなど、展示場とは違う楽しさがあります。
Aqua Art Miami
Ink Miami
New Material Art Fair
Select Fair
Verge(2013年の開催は未定)
Verge。この年はGreenview Hotelが会場(2011年)

Wynwood Walls <オススメ>
屋外のグラフィティ・アート展示場。アートフェアではありませんが、Art Basel開催時期に合わせて、グラフィティを新作に描き替えているようです。2012年は、OBEYブランドを率いるシェパード・フェイリーにより、同年亡くなったWynwood Wallsの立役者(ディベロッパー)トニー・ゴールドマンの肖像が描かれました。屋内展示スペースもあります。
http://thewynwoodwalls.com
Wynwood Walls。シェパード・フェイリーの壁画(2012年)
Wynwood Walls。インタビューを受けるアーティスト(2012年)
Wynwood Walls敷地内の屋内展示場(2012年)

アートフェア開催期間中はマイアミのいちばんのハイシーズンで、富裕層が集まるため、ホテルの宿泊代が高くなるようです。2012年の期間中は、サウス・ビーチの高級ホテル「SETAI」が一泊1000ドル以上という強気のレートだったとか。ミッド・ビーチの中級ホテル(サウス・ビーチからタクシーで10分くらい)ですと、リーズナブルかも?

また交通面では、サウス・ビーチではタクシーが捕まりにくいようです。フェアが集中するミッドタウン/ウィンウッド地区では、2012年にはエリア内に臨時貸し自転車を設置、それにダウンタウンから臨時トロリーが出ていました(トロリーはその後、定期路線になりました)。一部の会場ではシャトルを出すとのことです。



参考映画:
覆面アーティスト、バンクシーが監督したドキュメンタリー「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ(Exit Through the Gift Shop)」。トリックスターが生まれる過程を(偶然)捉えたブラックユーモアあふれる傑作です。アーティストとは?アートとは?パクリとは?などなど考えてしまいます。ストリートアーティストの命がけのゲリラ制作現場も撮影されており興味深い。Wynwood Wallsのシェパード・フェイリーも出演。またマイアミ各地に出現する「インベーダー」のモザイクを制作するフランスの覆面アーティストSpace Invaderも出て来ます。


この展示はいったい?と思ったら、Exit Through the Gift Shopの主人公によるインスタレーションでした。サウス・ビーチのHotel Boulanにて(2011年)
覆面アーティストSpace Invaderのモザイク。あちこちに隠れている(2013年)

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