2013年10月15日火曜日

リキテンスタイン、ノグチ、オピー…マイアミのパブリック・アート



有数の現代美術コレクターたちが暮らすといわれるマイアミですが、大規模な美術館がないのが寂しいところ。2013年12月に予定されている ペレス・アート・ミュージアム(Perez Art Museum Miami、旧Miami Art Museum) の開館が待たれますが、無料で一般に公開されているパブリック・アートはけっこうあります。有名作家のものなど、目に付いたものをご紹介します。
開館後のPerez Art Museum についてはこちら:


屋外のパブリック・アート

パブリック・アートといえば公園など屋外の公共スペースにある立体作品。ダウンタウンのベイフロント・パーク (Bayfront Park) には日米で活躍したイサム・ノグチの作品があります。「Slide Mantra 」(1986年)「Challenger Memorial」「Light Tower」の三点があります(「Light Tower」は展示場所を見つけられず未見)。
イサム・ノグチ「Slide Mantra」
イサム・ノグチ「Slide Mantra」
「Slide Mantra 」は子供が遊べる滑り台になっています。マイアミのものは白色ですが、黒バージョンが札幌のモエレ沼公園にあるとのこと。

「Challenger Memorial」はスペースシャトル・チャレンジャー号の事故で亡くなったクルーを追悼する記念碑です。建築家バックミンスター・フラーの「ジオデシック・ドーム」の骨組みを思わせる形状。フラーとノグチは親交があったといいます。
イサム・ノグチ「Challenger Memorial」
その証拠に、といいますか、1980年代の同公園の改修を記念するプレートにはイサム・ノグチとともにFuller & Sadao Professional Companyの名が刻まれています。建築家サダオ・ショージはフラーとノグチそれぞれの友人、ビジネスパートナーであり、両者を引き合わせた人物のようです。なおノグチは作品を残しただけではなく、公園の改修そのものにも携わったのですが、残念ながら、公式サイトを見てもいまひとつ詳細不明です。
バックミンスター・フラーとイサム・ノグチについてはこちらにもちょこっと書いております:

Bayfront Park
301 North Biscayne Boulevard Miami, FL 33132

マイアミ・ビーチの音楽ホール、フィルモア・ジャッキー・グリーソン・シアター (Fillmore Jackie Gleason Theatre)の前庭には、アメリカのポップアートを代表するロイ・リキテンスタインの「Mermaid」 (1979年)。マイアミ・ビーチ市がパブリック・アートとして発注した作品のようです。強烈な日差しのもと、彩色がだいぶ褪せているように見えるのですが…このままでいいんでしょうか。
ロイ・リキテンスタイン「Mermaid」
Fillmore Jackie Gleason Theatre 
1700 Washington Avenue, Miami Beach, FL 33139

マイアミ・ビーチの南端、サウス・ポイント・パーク (South Pointe Park) には越後妻有、豊島にも作品があるドイツのトビアス・レーベルガー「obstinate lighthouse」 (2011年)があります。こちらも市の発注。ミニ灯台になっていて夜は頂部にライトが点くそうです。
トビアス・レーベルガー「obstinate lighthouse」
South Pointe Park 
1 Washington Avenue, Miami Beach, FL 33139


ショッピングモールのパブリック・アート

ちょっと意外に思えますがショッピングモールにもパブリック・アートがあります。私企業のコレクションを無料で一般公開している、という感じでしょうか。

マイアミの北にあるアベンチュラ・モール (Aventura Mall)にはブラーのアルバムジャケット(古い例ですみません)で知られる英国のジュリアン・オピー「Suzanne Walking in Skirt and Top」 (2005年)、男木島や十和田市に作品があるスペインのジャウメ・プレンサ 「Florida's Soul」 (2006-2007年)など多数展示されています。
ジュリアン・オピー「Suzanne Walking in Skirt and Top」
ジャウメ・プレンサ「Florida's Soul」
Aventura Mall
19501 Biscayne Boulevard, Aventura, FL 33180
展示作品情報:

アベンチュラの南、高級ショッピングモール、バル・ハーバー・ショップス (Bal Harbour Shops) でも館内に立体作品が展示されています。(キャプション内容を控えなかったので詳細不明)
Bal Harbour Shopsの常設インスタレーション
Bal Harbour Shops
9700 Collins Avenue, Bal Harbour, FL 33154

Aventura Mall と Bal Harbour Shopsについてはこちらにも少し書いております:


ホテルのパブリック・アート

パブリック・アートと呼んで良いのか微妙ですが、ロビーで所蔵品を展示しているホテルがあります。

ミッド・ビーチ(マイアミ・ビーチ中部)の大型ホテル、フォンテーヌブロー (Fontainebleau Miami Beach)。2008年の改装の際、ロビーに豪華なシャンデリアが設置されました。このシャンデリア、中国の反逆のアーティスト、アイ・ウェイウェイ(艾未未) の作品だそうです。気が付かなかった…。
アイ・ウェイウェイのシャンデリア
フロントデスクの後ろにある色彩が変化するパネルは、越後妻有にも作品があるジェームズ・タレルの作品だそうです。さきごろグッゲンハイム美術館で大規模な個展が開催された「光のアーティスト」です。これも気が付かなかった…。いずれもホテルのインテリアに溶け込みすぎていて、ちょっともったいない気がします。
ジェームズ・タレルのパネル(フロントデスクの奥)
ちなみに同ホテルはモーリス・ラピダス(Morris Lapidus) が1954年に設計した建物も有名で、マイアミ・モダン様式 (Miami Modern、通称MiMo) の代表とされています。フランク・シナトラの公演会場になったり、映画「007/ゴールドフィンガー」(1964年)のロケ地になったりしました。

Fontainebleau Miami Beach
4441 Collins Avenue, Miami Beach, FL 33140  

前述のイサム・ノグチ作「Challenger Memorial」のすぐ向かいに、インターコンチネンタル・ホテルがあります。ロビーにはヘンリー・ムーア の大きな彫刻「Spindle」 (1981年)。大理石製、重さ70トン。キャプションによれば個人/私企業が所蔵するムーア作品では最大級とのこと。ロビーの壁面にはほかにも美術作品がちょこちょこ展示されています。
ヘンリー・ムーア「Spindle」
「Spindle」と同系色のホテルの建物はピエトロ・ベルスキ設計、ニューヨークの超有名ランドマーク「パンナム・ビル(現メットライフ・ビル)」をウォルター・グロピウスとともに共同設計した人だそうです。

Intercontinental Hotel Miami
100 Chopin Plaza, Miami FL 33131 

金融街ブリッケル地区にあるフォーシーズンズ・ホテルは、エントランスとロビーに美術作品を置いています。中でもコロンビア出身のフェルディナンド・ボテロの大きなブロンズ彫刻が目立ちます。同ホテルはボテロの彫刻を三体もっているとのこと。バスケ・チーム、マイアミ・ヒートが決勝リーグに進んだときには、これらの彫刻にヒートのユニフォームを着せていたようです(いいのかそんなことして)。
ボテロのブロンズ像
Four Seasons Hotels and Resorts
1435 Brickell Avenue, Miami, FL 33131

前述「Bal Harbour Shops」の向かいには高級ホテル「セント・レジス」が威圧感たっぷりにそびえており、ロビーの奥まった場所に名和晃平「PixCell Deer」(2011年)が飾られています。ひょっとしたら、2012年のアート・バーゼル・マイアミ・ビーチで、東京のSCAI the Bathhouseが出展していた作品かも。ロビーフロアには画廊もあります。
名和晃平「Pixel Deer」
The St. Regis Bal Harbour Resort
9703 Collins Avenue, Miami Beach, FL 33154

セレブたちが泊まるというサウス・ビーチ(マイアミ・ビーチ南部)のホテル「W」の小ぶりなロビーは、アートで溢れているといった趣です。物議を醸す作品制作が得意な英国のダミアン・ハーストの蝶、水玉シリーズが壁に展示されていました。
Wロビー
ダミアン・ハーストの蝶シリーズ
入口には既存キャラクターをモチーフにしたトム・サックス「Codependent Fountain Tableau (Kitty and Miffy)」 (2007年)「My Melody」 (2007年)があり、ミッフィ、ハローキティ、マイメロディが夢の競演を果たしています。張り子のように見えるテクスチャーですが、ブロンズに彩色したものだそうです。アート・バーゼル期間中には、ホテルの前にある緑地帯にもパブリック・アートが展示されます。
トム・サックス「Codependent Fountain Tableau」(手前)、「My Melody」(奥)

アート・バーゼルに関してはこちらをご参照ください:

W South Beach
2201 Collins Avenue, Miami Beach, Florida 33139


ここでは割愛しましたが「アート・バーゼルのサテライト・ショー」でご紹介したウィンウッド地区(Wynwood)のグラフィティもパブリック・アートですね。ほかにも、まだまだたくさんのパブリック・アートがあることと思います。特に、高級ホテルにはいろいろあるのではないかと狙っています。


※マイアミ・ビーチの美術館について
※イサム・ノグチと親交のあったバックミンスター・フラーについて


参考映画:
「ゴールドフィンガー」(監督:ガイ・ハミルトン 出演:ショーン・コネリー)

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