2013年6月26日水曜日

展示場再開発案、続報


観光客で賑わう繁華街、リンカーン・ロード(Lincoln Road)裏に、Portman-CMC社が提案するマイアミ・ビーチ展示場(Miami Beach Convention Center)再開発プランのショールームが出来ていました。Portman-CMC社はこのプロジェクトを「Miami Beach Square」と名付けることにしたようです。
Portman CMC社(インゲルス案)ショールーム


マイアミ・ビーチ市の展示場と周辺の再開発には、建築家ビャルケ・インゲルス氏のファームBIG(デンマーク)およびランドスケープデザインのWest 8 (オランダ)と組んだPortman-CMC社と、レム・コールハース氏のファームOMA(オランダほか)と組んだSouth Beach ACE社が、プランを提出しています。なおWest8は、展示場のお隣、ニュー・ワールド・センター(New World Center、フランク・ゲイリー設計)の前庭「サウンドスケープ・パーク(SoundscapePark)のデザインをしたファームです。
インゲルス案完成予想図
West8デザイン、Soundscape Park

地元紙のMiami Heraldによる、両プランの比較サイト「Billion Dollar Baby」(Compare the plansをクリック)

ブログ「未発育都市」管理人様のツイートでご紹介いただいた、OMA、BIG両社によるプロジェクトの説明(インタビュー動画)はこちら。
AD Interviews OMA, BIG on their Miami Showdown (Archdaily 2013年6月18日)

※よろしければこちらの投稿もご参照ください:
コールハースVSインゲルス 展示場改築プランで師弟対決 

Portman CMCの「Miami Beach Square」ショールームは6月にオープン。同社のサイトによれば、オープニング・パーティにはインゲルスさんご本人も来ていたんですねー。ショールームには模型や完成予想図、プロジェクトの詳しいパンフレットがありました。

ビーチ(大西洋)側から見た完成予想模型
パンフレットはひたすらライバルACE社との比較広告、うちのほうが優れていますよ!という内容。ショールームは7月中旬まで、火曜から土曜の10:00〜18:00にオープンしているとのこと。誰がこのプロジェクトを取るかは、7月中旬に決まるんですね。投票権のある方々(住民の私も権利あるのか?この点、不明なまま)が、7月16日に投票を終えるそうです。これまで調べてもどうも分からなかったのですが、やっと締め切りが判明。

Hundreds view the Portman-CMC vision for MBCC at the showroom opening
 (CMC-Portman社のサイト)

このプロジェクトでは展示場だけでなく、周囲の駐車場、ライブハウスも含まれ、また植物園や運河、モニュメントなどへの隣接施設へのアプローチも重視されています。展示場前の道路に分離帯を作ることまで計画に含まれています。

南側から見た完成予想模型。中央の大きな建物が展示場。
なおPortman-CMCの当初の案では、隣接するライブハウスを取り壊して新しいシルク・ド・ソレイユ劇場を建設するというものでしたが、即座に反対運動が起きたのをうけ、同社はさっとプランを変更し、劇場の後部を改築して広さを確保するという方針になりました(プラン提出→反対運動→改案まで2ヶ月くらいのあっという間の出来事だったように思います)。また、公園のような住民目線の共用スペースがいかに豊富か、というのも両社ともに重視していると思われます。
現在の展示場東側(上の模型の右側)
現在の展示場西側(上の模型の左側)
再開発対象のJackie Gleason Theater

インゲルス案では、展示場の一番高い部分で10階建てくらいになるようです。マイアミ・ビーチは海沿いを除いて高い建物が少ないので、かなりのインパクトになるでしょう。屋上はインスタレーションなどアート作品の発表の場にするそう。ハイエンドな美術展示即売会「Art Basel Miami Beach」を見込んでのことでしょうが、広大すぎる気も…。それにハリケーンの季節は危なくて立体作品などは置けなさそうですね。また現在の展示場敷地にない施設として、新たにボールルーム、ラテンアメリカ美術館が予定されています。
展示場屋上(パンフレットより)

インゲルス案ではポルトガルふうの白黒モザイク状石畳が提案されています。近くにあるLincoln Roadも同様の意匠なので、合わせたのかもしれません。
石畳(パンフレットより)
Lincoln Road


2013年5月14日のMiami Herald紙によれば、おおまかな費用と竣工時期は、コールハース案は12億ドル・2018年半ば竣工予定、インゲルス案は11.5億ドル・2017年夏竣工予定。こんな膨大な資金をどうやって捻出するの…というと、どうもまだはっきりしてないようです。展示場はマイアミ・ビーチ市経営ですが、再開発敷地内にホテルや飲食店など商業施設が入るので、それらの賃貸料(ディベロッパーが払うようです)で再開発費を何割か賄える、ということのようです。残りは税金?かというと、いつだったか、マイアミ・ビーチ市民には「観光客が払う税金(リゾート税のようなもの)を使えばいいから、市民には負担がありませんよ」という通知が来ていました。それはそれでアコギな気がしますが。
隣接するモニュメント「ホロコースト・メモリアル」
隣接するMiami Beach Botanical Garden (植物園)

さてどちらの案を取るかは、展示場のAdvisory Boardという委員会のメンバーの投票にかかっているようです。早々に投票に行った委員長の意見では、「駐車場がどうなるか。私が車を停めたら、トラックや機材に邪魔されるのか?この件についてACE社からは満足な回答が得られなかった」だからインゲルス案に一票、ということらしいです。不動産情報サイトのCurbedマイアミ版も「ハァ?こんな大プロジェクトで、駐車場が一番の関心事?」と呆れ気味です。なんにしても、7月半ばの投票結果が楽しみです。

Miami Beach Convention Center Advisory Board Recommends Bjarke Ingels & Company (Curbed Miami, 2013年6月18日)
http://miami.curbed.com/archives/2013/06/18/miami-beach-convention-center-advisory-board-recommends-bjarke-ingels-company.php#more


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参考情報:
Miami Beach Square Exhibition Gallery
715 N Lincoln Lane, Miami Beach, FL33139

Portman-CMC Miami Beach Convention Center Development Team


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