2013年12月4日〜12月8日に開催されたデザインの見本市「DesignMiami」。この見本市に「Four (4): New Visions for Living in Miami」というブースが出ていました。新しい暮らし方の提案かと思いきや、マイアミの不動産ディベロッパーが主催した豪華コンペの結果発表でした。ココナッツ・グローブ地区の集合住宅のコンペです。
ココナッツ・グローブ地区はマイアミ市の南の海沿いにあります。古くは著名人の別荘地でありパンナム航空のマイアミ・キューバ路線の発着所、その後カウンターカルチャーの拠点となり、現在は(筆者の印象では)かつてのヒップな輝きは褪せ、落ち着いた住宅街といったおもむき。
しかしいま着々とウォーターフロントの再開発が進んでおり、マリーナ再整備や公園の新設が計画されているほか、ことし2014年には若手建築家ビャルケ・インゲルス氏の設計による高層コンドミニアム「Grove at Grand Bay」が竣工予定です。そのGrove at Grand Bayのディベロッパー「Terra Group」が同プロジェクトの隣の土地を取得。そこに建設する住宅・商業施設・公園のコンプレックスの設計にあたって、コンペを開催したというわけです。
このコンペそのものが豪華で、まずTerra Groupはコンペのアシスト役としてテレンス・ライリー氏を起用。ライリー氏はニューヨーク近代美術館(Museum of Modern Art、通称MoMA) の建築・デザイン部門のチーフ・キュレーターを務めた建築家であり、また、2013年12月にオープンしたペレス・アート・ミュージアム・マイアミ(Perez Art Museum Miami)の館長でした。
残念ながら、フィナンシャル・タイムズ紙の記事によれば、なにかゴタゴタがあり開館前の2009年に館長の座を去ったとのことですが、館の設計をニュートラルなホワイト・キューブ(白い箱)にせず、地域に根ざした個性を求めてヘルツォーク&ド・ムーロンに決めたのはライリー氏だそうです。
テレンス・ライリー氏がキュレーションした「Four(4)」展ブース |
Architect Christine Binswanger on Perez Art Museum Miami (Financial Times、2013年11月29日)
さてライリー氏はコンペにあたって公募ではなく、30人の建築家から4名に絞り、プランの提案を依頼したとのこと(ニューヨーク・タイムズ紙の記事より)。この四つのファームがまた豪華で、下記のようになっております。
レム・コールハース氏のOMAニューヨーク・オフィス
(同オフィスは日本人建築家の重松象平氏が監督。中国中央電視台本部/北京、シアトル中央図書館など)
(同オフィスは日本人建築家の重松象平氏が監督。中国中央電視台本部/北京、シアトル中央図書館など)
Diller Scofidio + Renfro
(ハイライン公園共同設計/ニューヨーク、Institute of Contemporary Art/ボストンなど)
(ハイライン公園共同設計/ニューヨーク、Institute of Contemporary Art/ボストンなど)
アトリエ・ジャン・ヌーヴェル
(電通本社/東京、ケ・ブランリー美術館/パリなど)
(電通本社/東京、ケ・ブランリー美術館/パリなど)
クリスチャン・ド・ポールザンパール
(ルモンド社本社/パリ、LVMHタワー/ニューヨークなど)
(ルモンド社本社/パリ、LVMHタワー/ニューヨークなど)
4社のうち、Diller Scofidio + Renfroをのぞく3社の建築家は、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞の受賞者です。依頼にあたって支払われたギャラはほんの少額だったとの報道です。スター建築家も大変ですね。本コンペではディベロッパーがGrove at Grand Bayの経験からプロセスを重視し、OMAの重松象平氏によれば、選考中からディベロッパーと建築家がとても密な関係を保っていたそうです。
Miami Project Off to Arty Start (New York Times, 2013年11月29日)
DesignMiamiの「Four (4): New Visions for Living in Miami」展(こちらもテレンス・ライリー氏がキュレーション)では、上記4社の提案の図面や模型が展示されていました。
OMAは内部に柱が無い六つの細長い円筒形のタワー。Diller Scofidio + Renfroは渡り廊下でつながった2棟。アトリエ・ジャン・ヌーヴェルは各戸にグリーンをふんだんに配置。クリスチャン・ド・ポールザンパールはカーブを描く2棟と、シャープな形状の棟の組み合わせ。どのプランにも緑地帯があります。
4案のなかで、OMAのプランが採用されました。OMAはマイアミ・ビーチ・コンベンション・センターの改築、Faena Saxonyホテルのアートセンター(詳細不明)を手掛けることになっていますので、マイアミでのプロジェクトが立て続けに発生している感があります。
Terra Groupの経営者はOMA案について「ユニークな住宅、最大限に広くとった眺望、自然との結びつきがすばらしかった」と言っています(前述のニューヨーク・タイムズ紙より。意訳。間違っていたらすみません)。住宅はひとつのフロアに1戸か2戸しかないので、360度に近い眺望だとのこと。価格は1戸あたり200万ドル〜450万ドル(ペントハウスはさらに高いそうです)。敷地内には銀行や小売店などの商業施設や、彫刻を配した公園、住人用のスポーツ施設やワインルーム(←ワインセラー?)などが作られるとのことです。
Terra Groupの経営者はOMA案について「ユニークな住宅、最大限に広くとった眺望、自然との結びつきがすばらしかった」と言っています(前述のニューヨーク・タイムズ紙より。意訳。間違っていたらすみません)。住宅はひとつのフロアに1戸か2戸しかないので、360度に近い眺望だとのこと。価格は1戸あたり200万ドル〜450万ドル(ペントハウスはさらに高いそうです)。敷地内には銀行や小売店などの商業施設や、彫刻を配した公園、住人用のスポーツ施設やワインルーム(←ワインセラー?)などが作られるとのことです。
建設予定地の住所(プロジェクト名はまだ決まっていないようです):
2701 South Bayshore Drive, Miami, Florida 33133
参考リンク:
OMA wins coconut grove waterfront development in miami
(図版多数。designboom、2013年12月12日)
(図版多数。designboom、2013年12月12日)
Terra Group公式サイト
Four (4): New Visions for Living in Miami展 (DesignMiami公式サイトより)
関連エントリー:
※OMAが一部関わっているFaena Saxonyホテルについて少し書いております
※本エントリーの物件の隣、Grove at Grand Bayについて
※OMAが設計するマイアミ・ビーチの展示場について
※テレンス・ライリー氏が館長をしていたヘルツォーク&ド・ムーロン設計の美術館について
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