当ブログはマイアミに限定した内容でお送りする主旨なのですが、今回は番外編。フロリダ州中部にあるフロリダサザンカレッジ (Florida Southern College) キャンパスに残る、フランク・ロイド・ライト (Frank Lloyd Wright, 1867-1959)の建築群をご紹介したいと思います。日本でも人気のライトですが、この学校のことはあまり知られていないのでは?と思うからです。
東京の旧帝国ホテル、自由学園明日館などを設計したフランク・ロイド・ライト の建築は、おもに個人住宅が全米各地に残っていますが(例:落水荘。レゴにもなっている有名なやつです)、フロリダサザンカレッジは世界でいちばん作品が集中している場所だそうです。そのためキャンパスは2012年にアメリカ国定歴史建造物に指定されました。
フロリダサザンカレッジ、米歴史建造物(ナショナルジオグラフィックニュース、2012年3月30日)
同カレッジはフロリダ州中部、ポーク郡レイクランド市 (Lakeland, Polk County) にあります。ディズニーワールドがあるオーランドと、アメリカ軍中東方面司令部があるタンパの中間くらい。オーランドから車で一時間弱。マイアミがあるフロリダ南部とはずいぶん雰囲気が異なり、どちらかというとアメリカ南部の仲間という感じ。ラテンアメリカの匂いがまったくありません。Lakelandという名の通り、キャンパスの前には大きな湖があります。なおレイクランド市は愛媛県今治市と姉妹都市提携しているそうです。
今治市:姉妹都市交流(カレッジのライト建築についてちょこっと言及あり)
フロリダサザンカレッジのライト建築群は1938年、学長が当時すでに70歳だったライトに設計を依頼。1939年〜1958年に学生も参加して建設。建物だけでなく、各棟をつなぐ遊歩道や噴水なども設計されました。建設されなかったプランも多くあるようですが、同カレッジのビジターセンターのパンフレットには8作品+遊歩道が紹介されています。グーグルマップの空撮写真を見ると遊歩道の幾何学的な配置がかっこいいですね(ライト作品が集中するのはキャンパス西側)。
Frank Lloyd Wright Visitor Center
ではビジターセンターのパンフに沿ってご紹介。
Thad Buckner Building (旧E.T. Roux Library。ビジターセンターがある棟。内部見学OK)
竣工:1945年
半円形のホールですが、もとは図書館のリーディング・ルームだったとのこと。ビジターセンターがあり、パンフをもらえます。ライト建築の模型なども置いてあります。グッズ販売もしているそうです。
Annie Pfeiffer Chapel (内部見学OK)
竣工:1941年
塔に金属細工があるチャペル。パンフによりますとライトのあらゆる基本的な要素が含まれているとか。壁面は色ガラスをはめたブロック。残念ながら内部は未見。
William H. Danforth Chapel(内部見学OK)
竣工:1955年
Polk County Science Building (内部は見学不可)
竣工:1958年
Lucius Pond Ordway Building (内部は見学不可)
竣工:1952年
元々は食堂としてデザインされたものの、その目的で使われたことはなく、芸術系学部と学生ラウンジとして利用されたとのこと(現在は不明)。中庭があるそうです。アリゾナ州のライトの自宅兼事務所「タリアセン・ウェスト」に比較されることが多いとのこと。
Carter Walbridge, Hawkins Seminar Building (内部は見学不可)
竣工:1941年
竣工:1948年、改修:2007年
円形の大きな噴水。水を高さ45フィート(約13メートル)まで噴き上げさせて水のドームを作ることができるそうです。残念ながら私が訪れたときには、ドーム状にはなっていませんでした。
Emile E. Watson-Benjamin Fine Administration Buildings (内部は見学不可)
竣工:1948年
管理棟という名前ですが、現在の用途は不明。見たところ分からなかったのですが、数棟がつながっているようです。中庭と池があるとのこと。
Esplanades
竣工:1941年〜1958年
各棟をつなぐ屋根付きの遊歩道。
下の写真の音楽ホールBranscomb Auditoriumは、ライト作品かと思いきや、ライトの死後に弟子Nils Schweizerが設計したとのことです。天窓がライトスタイル。
老朽化している部分もあり、特に壁面のブロックは水が浸み込んだため傷んだそうで、同カレッジでは修復しながら使用している様子です。
下の写真の音楽ホールBranscomb Auditoriumは、ライト作品かと思いきや、ライトの死後に弟子Nils Schweizerが設計したとのことです。天窓がライトスタイル。
フロリダサザンカレッジのライト作品群は、現代のアメリカ建築と比べると天井が低く、建物自体も小さめです。小ささも含めてそこはかとなく日本を思わせる雰囲気があり親しみを覚えました。また、シンプルな建物に見えても、眺める角度によってまったく違う表情が見えて飽きませんでした。オーランドやタンパにいらしたついでに寄ってみてはいかがでしょうか。ビジターセンターではガイドツアーも開催しているそうですよ。
関連エントリー:
「水族館のフラー・ドーム」(2013年6月8日)
「アール・デコ建築」(2013年4月23日)
フロリダサザンカレッジのライト建築群については、以下の書籍に紹介されているようです。
「フランク・ロイド・ライトの建築遺産」(岡野真 著、丸善、2005年)
「アーキテクチャー GAトラベラー007 (GA TRAVELER Frank Lloyd Wright Arichitecture)」(二川幸夫 著、A.D.A. Edita Tokyo、2003年)
参考リンク:
Frank Lloyd Wright at Florida Southern College(個人の方のサイトと思われます。研究成果の発表?)
Frank Lloyd Wright Foundation
Google の World Wonders Project
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