2013年10月18日金曜日

マイアミでいちばん使われる言語は、英語ではなく…



マイアミを歩いていると耳に入ってくる言葉。英語でないことがしばしばです。では何語かというと、圧倒的にスペイン語が多い。それもそのはず、マイアミ・デード郡の住民の半分以上が、ラテンアメリカ系の人々なのです。

マイアミ市、マイアミ・ビーチ市、コーラル・ゲーブルズ市などが属するマイアミ・デード郡。アメリカ合衆国国勢調査局から、この郡の2012年の人口統計の予測が発表されています。

<マイアミ・デード郡 2012年人口予測>
総人口 2,591,035人 (←日本でいえば大阪市くらい)

人種別の内訳:
白人 77.6%
黒人またはアフリカ系 19.2%
先住民(アメリカ、アラスカ) 0.3%
アジア系 1.7%
先住民(ハワイ、大西洋諸島) 0.1%
二人種以上の混血 1.2%

出典:Miami-Dade County Quick Facts from the US Census Bureau 
(アメリカ合衆国国勢調査局、United States Census Bureau)

アジア系、少ないですねえ。そこそこの規模の都市なのに、マイアミには中華街がないのですが、さもありなん。もとからこの地に暮らしていたはずの先住民(セミノール族、ミコスキー族など)も、少ないですね。多民族国家なのに、混血も意外なほど少ないですね。

人種別データだけでは、白人も黒人も先住民との混血の人もいるラテンアメリカ系の人口が分かりませんが、上記のデータとともに、以下の予測も出されています。

ヒスパニックまたはラティーノ(人種問わず) 64.3%
非ヒスパニックまたは非ラティーノの白人 16.3%

なんとラテンアメリカ系(ヒスパニック、ラティーノ)が6割以上。これをマイアミ市だけに限るとさらに割合が大きくなり、70.0%に上ります。圧倒的なマジョリティです。(ただしここには、使用言語が異なるブラジル、ハイチなどのカリブ諸島出身者も含まれているものと思われます。)
キューバ系スーパーのチラシ。英語・西語併記。一部は西語のほうを大きく表示
何をもってヒスパニック/ラティーノかというと、基本的には自己申告で、自身の受け継いでいる伝統、国籍、血筋、自身や先祖の出身国などからの判断であろうとのことです(同調査局の解説より)。たとえばキューバ系移民三世の人も、アメリカ領土であるプエルトリコ出身の人も、アメリカ人であると同時に自分はラティーノであると自己規定していれば、統計上はここに入ることになります。

ひとくちにラテンアメリカと言っても、人々はいろんな国からマイアミに来ています。Wikipediaのマイアミ・デード郡の項によれば、2010年の時点で、外国生まれの住民の出身国は、多い順にキューバ、コロンビア、ハイチ、ニカラグア、ついでホンジュラス、ドミニカ、ベネズエラ、ペルー、ジャマイカ、メキシコ、アルゼンチン。1959年の革命以降、カストロ政権下からアメリカに亡命してきたキューバ人がいちばん多い。ミュージシャンのグロリア・エステファンも子供のときにキューバからマイアミに逃れた移民です。

話をスペイン語に戻しますと、前述のWikipediaに次の記述があります。

<マイアミ・デード郡住民が家庭で使用する言語(2010年現在)>

スペイン語 63.77%
英語 28.07%
フレンチ・クレオール(ハイチの言語)4.22%

出典:Wikipedia(英語)マイアミ・デード郡の項

言語面でもスペイン語が圧倒的マジョリティ。もうほとんどスペイン語圏。マイアミでは英語がまったく分からなくともスペイン語で生活できると思います。行政や公共交通のお知らせは英語、スペイン語、フレンチ・クレオールの三ヶ国語で記されていますし、運転免許取得の試験は英語かスペイン語で受けることができます。

住民だけではなく、ラテンアメリカからビジネスや観光目的でマイアミに来るお客さんも多く、ホテルやお店などサービス業ではたいていスペイン語が通じる(というかスペイン語が母語の)従業員がいます。サービス業は、英西バイリンガルでないと務まらなさそうです。
バス停の表記は上から英語・スペイン語・フレンチクレオール語
スペイン語の日刊新聞も発行されています。地元紙「Miami Herald」のスペイン語版「エル・ヌエボ・エラルド(El Nuevo Herald)」がそれです。単に英語版をスペイン語版に翻訳しているのではなく、一面の作り方がまったく違う、つまり記事の優先順位が異なります。読者のニーズが大きく異なるのだと思われます。

2013年10月17日に販売スタンドにあった新聞を比べてみると、Miami Heraldはオバマ大統領の大きな写真とともに、政府機関の一部を麻痺させていた債務上限枠問題についてとりあえず先送りすることに民主・共和の両党が合意、窮地を脱した、というニュースがいちばん目立つレイアウト。この日のアメリカでは最重要なはずのニュースなので、当然ですね。
左:El Nuevo Herald(スペイン語)、右:Miami Herald(英語)
一方、El Nuevo Heraldでは、オバマさんではなく、キューバ出身の野球選手の写真をドーンと大きく掲載。同紙のウェブ版を見てみると、ヘッダーに「El Nuevo Herald: キューバ、マイアミ、ベネズエラ、コロンビア、スポーツ、エンターテイメントそして移民に関するニュース」とあります。マイアミよりも、国外の(それもアメリカとは国交がない)キューバが先に来るのです。それだけ、マイアミにおけるキューバ系コミュニティの存在が大きいのだと考えられます。

同じスペイン語でもスペイン、ラテンアメリカ各国でアクセントや語彙に違いがあります。といっても、独特なアクセントを持つアルゼンチンを除いてどういった特徴があるのか、私にはまだ区別がつかないのですが…。キューバなどカリブ系もかなりアクセントが強いように聞こえるかな?スペイン語を勉強されている方は、マイアミに来れば多様なスペイン語に接することができて、面白いかもしれませんよ。
お店の注意書き。英語・スペイン語併記

参考リンク:
El Nuevo Herald

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