アール・デコ建築

マイアミ・ビーチ市はアール・デコ建築が豊富に残る街です。アール・デコとは、1925年にパリで開催された現代装飾美術・産業美術国際博覧会」（Exposition Internationale des Arts Décoratifs et Industriels Modernes → 略してアール・デコ Art Deco)から生まれた言葉で、当時はやったデザインを総称してそのように呼んでいたようです。

古代エジプトや中米のアステカ遺跡などからインスピレーションを得つつ、その前の時代に人気のあったアール・ヌーボーの有機的なデザインとは異なり、直線的なデザイン、また当時産業に台頭しつつあったマシンの新しさ・スピードを反映した流線型のデザインが特徴です。（これらのソースは忘れました、ごめんなさい。Wikiはこちら　http://ja.wikipedia.org/wiki/アール・デコ）

アップルストアとスワロフスキー（リンカーン・ロード）

小物でいえば代表的なのはフランスのルネ・ラリックの香水瓶、イギリスの車のジャガーのエンブレムなどがアール・デコ様式です。建築ではニューヨークのクライスラー・ビル、日本では目黒の朝香宮邸（現・東京都庭園美術館）などです。

東京都庭園美術館（東京、目黒）

ではなぜアール・デコ様式がマイアミ・ビーチに導入されたのか？それは1926年に大きなハリケーンが来襲したからです。避寒地、リゾート地として潤っていた（今でもそうですが）街はハリケーンによって壊滅し、再建の必要に迫られました。街を建て直す際、避寒に来る旅行客の目を惹く新奇で人気のあるスタイルにしよう、ということで当時はやっていたアール・デコが採用されたのでした。

The Essex House Hotel（コリンズ・アベニュー）

その後、麻薬を運ぶマフィアの流入によって治安は悪化し建物は朽ちるがままに放置。マイアミは温暖なため、ニューヨークなど寒冷地出身のお年寄りがリタイア後に暮らす場所として人気のある街でした。治安が悪くなりインフラが古くなったぶん安く借りることができたのでしょう、お年寄りたちは依然として老朽化したアール・デコの建物に暮らしていました。

H&M（リンカーン・ロード）

1970年代に再開発の波にさらされたとき、ニューヨーク出身のBarbara Baer Capitmanが保存活動に乗り出し、マイアミデザイン保存リーグ (Miami Design Preservation League 、略称MDPL)という団体が設立され、現在でも保存活動を続けています。

（以上、ほぼMDPL主催「アールデコ・ウォーキング・ツアー (Art Deco Walking Tour)」の受け売り）

Congress Hotel （オーシャン・ドライブ）

現在ではアール・デコ建築が残る広い街区がすっかりマイアミ・ビーチの観光資源になっています。商業施設が集まる観光スポットのオーシャン・ドライブ（Ocean Dr)を始め、そこから通りを少し入ったところにある住宅地でも多くのアール・デコ建築を見ることができます。

オーシャン・ドライブ

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オーシャン・ドライブ

関連エントリー：
「アール・デコのインテリア」
http://bunkakeimiami.blogspot.com/2013/09/blog-post_27.html#more
「アール・デコのレリーフ」
http://bunkakeimiami.blogspot.com/2013/05/blog-post_13.html

参考リンク：
The Essex House Hotel 
http://www.essexhotel.com

Congress Hotel South Beach
http://www.congresshotelsouthbeach.com

Miami Design Preservation League

http://www.mdpl.org

アールデコ・ウォーキング・ツアー (Art Deco Walking Tour)

20ドルと高めですが、ガイドをしてくれる人は無償ボランティアで、参加費は保存活動に充てられます。

http://www.mdpl.org/tours/guided-walking-tours/

オーシャン・ドライブロケの「アヲハタ55ジャム」CM (1997年）

http://www.youtube.com/watch?v=mrnisMhwWmQ

参考文献：
わずかですがこちらの本には、フロリダのアール・デコについて触れられています。
「アール・デコの建築―合理性と官能性の造形」（吉田鋼一、中央公論新社、2005年）

2014年1月追記：
前掲書と同じ著者による「図説　アール・デコ建築—グローバル・モダンの力と誇り」（吉田鋼一、河出書房新社、2010年）ではマイアミのアール・デコ建築についてより詳しく書かれており、「アール・デコの楽園マイアミ・ビーチ」というコラムがあります。またコラム「アール・デコ・ソサイアティー」にMiami Design Preservation Leagueについての言及があり、「このMDLPから、米国に次々にソサイアティーが生まれた」とあります。