2013年11月19日火曜日

もうすぐハヌカのお祭り。マイアミのユダヤ文化


以前のエントリー「マイアミでいちばん使われる言語は、英語ではなく…」でマイアミの人口統計をご紹介しましたが、こうした人種別・出身国別の統計には表れないものの、マイアミやその周辺で大きなエスニックグループを形成しているのではないか?と考えられるのが、ユダヤ系アメリカ人の住民です。


ユダヤ系住民はもともとどこから来たのか

Jewish Museum of Florida
マイアミ・ビーチの南端に「ジューイッシュ・ミュージアム・オブ・フロリダ(Jewish Museum of Florida)」という博物館があります。建物はかつての礼拝所。マイアミに移住したユダヤ系の人々の歴史や文化を紹介する博物館で、入場するとガイドの人が付いていろいろ説明してくれます(余談ですが、受付の女性が、日本から団体が見学に来たことがある、と言っていました。日本にユダヤ系コミュニティがあるとは知りませんでした)。

映画「ゴッドファーザー Part II」では、主人公マイケル・コルレオーネが、キューバと商売をしているユダヤ人ギャング、ハイマン・ロスを訪ねてフロリダにやって来るシーンがあります(その後マイケルはキューバにも行き、革命を目撃)。ロスのモデルは実在のギャング、マイヤー・ランスキー。ランスキーはこの博物館がシナゴーグだった頃に礼拝に来ていたそうで、寄進者の名を記したステンドグラスに、その名を見ることができます。
ランスキーの名が見えるステンドグラス
ガイドさんはたしかこんな話をしていました。
  • フロリダはニューヨーク、カリフォルニアとともにアメリカでユダヤ系住人が多い州である。
  • 20世紀初頭にマイアミ・ビーチに移住したユダヤ人の多くはリトアニア出身で、言葉はイディッシュ語(ドイツ語にとても近いが、表記はヘブライ文字。現在の日常会話は英語と思われる)。20世紀後半、キューバ革命が起こると、キューバ系ユダヤ人もマイアミに亡命してくるようになった。
  • 博物館がある場所、マイアミ・ビーチの5th Street から南は、かつてユダヤ系住民の居住地だった。5th Street以北を所有していたマイアミ・ビーチの開発者らがユダヤ人を締め出したため。第二次世界大戦後もしばらくは、ホテルの宿泊を断られるなど差別は続いた。

キューバ出身ユダヤ系アメリカ人という人がいるのですね。確かにマイアミ・ビーチ市内にはCuban Hebrew Congregation Miamiという施設があります。集会所でしょうか。かつてスペインで追放の憂き目にあい、時同じくして大航海時代が始まったため、ラテンアメリカ各地に移住したユダヤ人は多いといいます。映画「Pain & Gain」では、主人公らに拉致されるお金持ちがマイアミ在住ユダヤ系コロンビア人という設定でした。
Cuban Hebrew Congregation Miami
また、ニューヨークなど米国北部からの移住、老後の生活場所として移住してくる人も多かったと思われます。蟹料理で有名なマイアミのレストラン「ジョーズ・ストーンクラブ (Joe's Stone Crab)」の創業者は、喘息療養のためニューヨークから移住したそうです。Joe'sの立地は、前述の博物館のすぐ近く、つまり昔のユダヤ人居住地です。
Joe's Stone Crab店内

街で見かけるユダヤ文化

マイアミ・ビーチやバル・ハーバー周辺には特にユダヤ系住人が多いようで、ユダヤ教のシナゴーグ(礼拝所)、ユダヤ系の学校や商店をあちこちで見かけます。また一般的なスーパーでも、コーシャ・フード (Kosher food) という、ユダヤ教のルールに従って加工をした食料品を扱っています。またマイアミ市ダウンタウンには宝石店が多いのですが、宝石ビジネスに長年従事してきたユダヤ系の人々が経営しているものと思われます。
サウス・ビーチのシナゴーグ、Temple Emanu-el
バル・ハーバーのユダヤ系子弟のための学校
ダウンタウンの宝石店
どうやらマイアミ在住のユダヤ系の人々は、ユダヤ教の厳格な宗派に属している場合が多いらしく、ルールに則った服装の人をよく見ます(世俗的な人は一般的な服装なので、外見からはほかの西洋人と区別がつきません)。男女ともに肌の露出が少ない服装で、特に男性は長い髭をたくわえ、ヤームルカという黒い小さな帽子、黒い上着をきっちり着用していることが多く、一年中暑いなか根性があるなあと思います。女性は男性よりバリエーションがあるようですが、スカートは長め、人によってはスカーフで髪を隠しています。お店によるのでしょうが、ユダヤ教の安息日(金曜日没〜土曜日没)は閉店する商店もあります。
バル・ハーバー近くの商店
スーパーのコーシャ食品コーナー
11月下旬の祝日サンクスギビングデー(Thanksgiving Day)の連休あたりから始まる、米国のクリスマス・年末に向けてのホリデーシーズンは、ユダヤ教の祭日「ハヌカ (Hanukah)」の時期とだいたい重なっています。この頃になると、メリークリスマスではなく「Happy Holidays」という言葉があちこちに掲げられ、季節の飾り付けが見られるようになります。マイアミではクリスマス飾りとハヌカの象徴、燭台が一緒に飾られている場面をよく見ます。ハヌカは二千年以上前のエルサレム神殿奪回を記念するお祭りだそうです。数日間続き、燭台に毎晩ひとつずつ火を灯していきます。(2013年のハヌカは11月27日〜12月5日)
ハヌカのお祭り。マイアミ・ビーチ市のLincoln Roadにて(2012年)
マイアミ・ビーチ市内には「ホロコースト・メモリアル (Holocaust Memorial)」というモニュメントもあります。NPOが建設、1990年とわりに最近出来たものなのですが、同施設の公式サイトによれば、モニュメント建設案が出た当時「南フロリダは、米国でホロコースト生存者がもっとも多い地域のひとつ」だったそうです(第二次世界大戦後に移住した人も多いということですね)。公園のようになっており無料で見学できます。
Holocaust Memorial
宝石や金融と同じく映画もユダヤ系の人が多い産業ですが、マイアミでは毎年「ジューイッシュ・フィルム・フェスティバル (Miami Jewish Film Festival)」が開催されます (同様のイベントは米国各地でやっています)。アメリカだけでなくイスラエルなど各国の映画が上映されます。いちど行ったことがありますが、監督との質疑応答タイムなどもあって面白いイベントでした。前述のホロコースト・メモリアルも比較的最近のものですが、現在でも若い監督がホロコーストが主題の新作映画を撮っていたりして、ホロコーストは繰り返し表現される民族の記憶なんだなあ、などと思ったりします。(2014年は1月23日〜2月3日に開催予定)

2014年Miami Jewish Film Festival 予告集 (公式サイトより)


マイアミにいらしたらユダヤ文化に目を向けてみるのも面白いのではないでしょうか。日本ではなかなか見る機会がないと思うので。

関連エントリー:
天気が悪いときはどうするか (2013年7月2日)
※Jewish Museum of Floridaについて少し書いています


参考リンク:
Jewish Museum of Florida
Holocaust Memorial Miami Beach
Joe's Stone Crab
Miami Jewish Film Festival
ハヌカの説明 (Wikipedia)

参考映画:
「イン・ハー・シューズ (In Her Shoes)」(2005年、カーティス・ハンソン監督)

残念ながら未見なのですが、主人公(キャメロン・ディアス)が、マイアミでリタイア生活を営むユダヤ人の祖母(シャーリー・マクレーン)を訪ねるコメディだそうです。




「ゴッドファーザー Part II (The Godfather Part II)」(1974年、監督:フランシス・フォード・コッポラ)

これほど見事な続編というのもなかなか無いんじゃないでしょうか。役者の演技も素晴らしく、外見はマーロン・ブランドーと全然似ていないロバート・デ・ニーロが、ドン・コルレオーネにしか見えません。

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